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中小企業診断士2次試験・事例I|外部連携による組織変革と人材戦略の答案練習

この記事で練習する切り口

今回は、大手企業との業務提携を契機とした組織変革をテーマに、事例I型の設問を作成しました。外部連携がもたらす組織課題、人材育成の必要性、経営者の役割、組織体制の変更といった、事例Iで頻出の論点を練習します。答案では「提携という外部環境の変化に、組織・人事面でどう対応するか」という因果関係を明確にすることが求められます。与件に散りばめられた組織の強み・弱みを正確に拾い、助言の実行主体と効果を具体的に示すことが加点のカギです。

題材ニュースの要約

米半導体大手エヌビディアのCEOが来日し、日本企業との提携を予告しました。AI分野での協業が注目される中、技術力を持つ日本企業との連携により、新たなビジネス機会が生まれることが期待されています。このニュースから、中小企業が大手企業と提携する際の組織課題、人材育成、経営者の役割といった、診断士試験で頻出の組織・人事論点を練習する架空事例を作成しました。

元記事:東洋経済オンライン

今回の事例タイプ

事例I(組織・人事)に該当します。大手企業との提携という外部環境変化を機に、組織体制の再構築、人材育成、権限委譲、組織文化の変革が求められる状況を設定しました。事例Iでは「変化への対応」が重要なテーマであり、本事例でも提携による事業拡大に対し、従来の家族的経営から脱却し、組織的な経営体制を構築する必要性を描いています。沿革、経営者の特性、組織の強み・弱み、人材面の制約を与件に盛り込み、設問では変革の理由、組織課題、人材育成策、経営者の役割を問う構成としました。

与件文

A社の概要
A社は、従業員40名の画像処理ソフトウェア開発企業である。現社長(55歳)は創業者の長男で、15年前に父から事業を承継した。本社は地方都市に置き、首都圏に営業拠点を持つ。

沿革と強み
創業者である先代社長は大手電機メーカー出身の技術者で、30年前に独立し、産業用カメラ向けの画像処理ソフトを開発してきた。特定顧客との長期取引を重視し、顧客ごとにカスタマイズしたソフトウェアを提供することで信頼を獲得してきた。現社長も技術畑出身で、開発部門に10名の技術者を抱える。技術者の平均勤続年数は12年と長く、高度な技術ノウハウが蓄積されている。顧客からは「細かな要望にも柔軟に対応してくれる」と評価されている。

外部環境の変化
近年、AI技術の進展により、画像認識市場が急拡大している。A社にも大手IT企業B社から、AI画像認識システムの共同開発の打診があった。B社は国内大手企業への販路を持ち、A社の技術力を評価している。提携が実現すれば、A社の売上は3年で現在の2倍になる見込みである。

組織の現状と課題
A社の組織は、開発部門、営業部門、管理部門の3部門で構成されるが、部門長は置かれていない。社長が全ての意思決定を行い、技術的な判断も社長が最終決定している。営業担当者は5名いるが、既存顧客のルート営業が中心で、新規開拓の経験は乏しい。管理部門は総務・経理を兼任する3名のみで、人事制度は整備されていない。社員は社長の指示を待つ傾向があり、若手社員からは「自分で判断してよいのか分からない」との声が上がっている。また、開発部門の技術者は個別案件に専念しており、部門横断的なプロジェクト経験がない。B社との提携では、複数部門が連携し、短納期で開発を進める必要があるが、現状の組織体制では対応が難しい。

設問

第1問(配点20点)
A社がB社との提携を進めるにあたり、組織面で生じると考えられる課題を、与件文の情報をもとに100字以内で述べよ。

第2問(配点20点)
A社社長が提携による事業拡大に対応するために、組織体制をどのように変更すべきか、その理由とともに120字以内で助言せよ。

第3問(配点30点)
A社が提携後の開発プロジェクトを円滑に進めるために、人材育成面でどのような取り組みを行うべきか、その効果とともに120字以内で助言せよ。

第4問(配点30点)
A社社長が、組織変革を進める過程で果たすべき役割について、留意点とともに120字以内で助言せよ。

解説と答案例

第1問

設問意図:提携という外部環境変化に対し、現状の組織がどのような問題を抱えているかを問う設問です。与件文から「社長への権限集中」「部門長不在」「指示待ち文化」「部門横断経験の欠如」といった組織上の弱みを抽出し、それが提携後の事業展開にどう支障をきたすかを因果関係で示すことが求められます。

与件根拠:「部門長は置かれていない」「社長が全ての意思決定を行い」「社員は社長の指示を待つ傾向」「部門横断的なプロジェクト経験がない」「複数部門が連携し、短納期で開発を進める必要があるが、現状の組織体制では対応が難しい」。

解答骨子:①社長への権限集中による意思決定の遅れ、②部門長不在による部門間調整機能の欠如、③指示待ち文化による主体性不足、④部門横断プロジェクト経験の不足。これらが提携後の迅速な対応を阻害する点を指摘します。

答案例:社長に権限が集中し部門長が不在のため、部門間調整が困難で意思決定が遅れる。また、社員に指示待ち傾向があり主体性が不足し、部門横断的なプロジェクト経験がないため、提携後の複数部門連携による短納期開発に対応できない。

採点ポイント:「権限集中」「部門長不在」「指示待ち」「部門横断経験の欠如」のうち2つ以上を挙げ、それが提携後の業務(部門連携、短納期、意思決定速度)にどう支障をきたすかを因果で示せているか。一般論ではなく、与件の具体的な記述を根拠にしているか。

NG答案:「人材が不足している」「ITスキルが低い」など、与件に明示されていない課題を挙げる答案。また「営業力が弱い」など、設問が問う「組織面」から外れた答案は減点対象です。

第2問

設問意図:第1問で抽出した課題に対し、組織体制をどう変えるべきかを問う助言問題です。「部門長の設置」「権限委譲」「プロジェクト制の導入」といった組織構造の変更を、その理由(なぜその変更が必要か)とともに示すことが求められます。

与件根拠:「部門長は置かれていない」「社長が全ての意思決定」「複数部門が連携し、短納期で開発を進める必要」「従業員40名」。規模的に部門長を置くことが可能であり、提携後の業務には部門間調整が不可欠です。

解答骨子:①部門長を設置し権限委譲、②プロジェクトマネージャーを任命、③部門横断の開発チーム編成。理由は、意思決定の迅速化、部門間調整の円滑化、社長の戦略業務への専念です。

答案例:開発・営業・管理の各部門に部門長を設置し、日常業務の意思決定権限を委譲する。また、提携案件ごとにプロジェクトマネージャーを任命し、部門横断チームを編成する。これにより、意思決定が迅速化し、部門間調整が円滑になり、社長は戦略業務に専念できる。

採点ポイント:「部門長設置」「権限委譲」「プロジェクト制(またはチーム制)」の要素が入っているか。理由として「意思決定の迅速化」「部門間調整」「社長の役割変化」など、第1問の課題に対応した因果が示されているか。

NG答案:「外部から人材を採用する」など、設問が問う「組織体制の変更」ではなく人材調達に終始する答案。また「全社会議を増やす」など、具体的な組織構造の変更が不明確な答案は低評価です。

第3問

設問意図:組織体制の変更だけでなく、人材育成によってどう組織能力を高めるかを問う設問です。「部門横断スキル」「プロジェクト管理能力」「主体性」の育成が論点となります。効果まで問われているため、育成策→能力向上→業務成果という因果を明示する必要があります。

与件根拠:「部門横断的なプロジェクト経験がない」「若手社員からは『自分で判断してよいのか分からない』との声」「複数部門が連携し、短納期で開発を進める必要」。これらから、プロジェクト管理、部門間連携、主体的判断の育成が必要です。

解答骨子:①プロジェクトマネジメント研修の実施、②B社との合同プロジェクトへのOJT参加、③権限委譲による主体的判断の促進。効果は、部門横断スキル向上、短納期対応力強化、社員の主体性向上です。

答案例:プロジェクトマネジメント研修を実施し、B社との合同プロジェクトにOJTとして若手を参加させる。また、部門長に権限委譲し、社員の主体的判断を促す。これにより、部門横断スキルが向上し、短納期開発に対応でき、社員の主体性が高まり提携案件を円滑に進められる。

採点ポイント:「研修(Off-JT)」「OJT」「権限委譲による育成」など、具体的な育成手法が示されているか。効果として「スキル向上」「短納期対応」「主体性向上」など、与件の課題や提携後の業務要求に対応した内容が因果で書かれているか。

NG答案:「研修を実施する」だけで終わり、どのような研修か、誰に対してか、どのような効果があるかが不明確な答案。また「モチベーションを高める」など、設問が問う「人材育成」からずれた精神論的な答案は減点されます。

第4問

設問意図:組織変革を進める際の経営者の役割を問う設問です。事例Iでは経営者のリーダーシップ、ビジョン提示、組織文化変革への関与がよく問われます。留意点まで求められているため、変革の推進だけでなく、抵抗への対処や現場への配慮といった視点も必要です。

与件根拠:「社長が全ての意思決定を行い」「社員は社長の指示を待つ傾向」「技術者の平均勤続年数は12年と長く」。長年の家族的経営から権限委譲への移行は、現場の不安や抵抗を生む可能性があります。また、社長自身が技術者出身で現場志向が強いため、戦略業務への転換が必要です。

解答骨子:①提携の意義とビジョンを全社に共有、②権限委譲を段階的に進め現場を支援、③自らは戦略業務に専念し外部折衝を担う。留意点は、現場の不安に配慮し、失敗を許容する文化を醸成することです。

答案例:社長は提携の意義と将来ビジョンを全社に示し、権限委譲を段階的に進めながら部門長を支援する。自らは戦略業務とB社との折衝に専念する。留意点は、現場の不安に配慮し対話を重ね、失敗を許容する文化を醸成し、社員の主体的挑戦を促すことである。

採点ポイント:「ビジョン提示」「権限委譲の推進」「自らの役割転換(戦略・外部折衝)」が示されているか。留意点として「現場への配慮」「段階的実施」「対話」「失敗許容」など、変革の実行可能性を高める要素が入っているか。

NG答案:「強いリーダーシップを発揮する」など抽象的で、具体的な行動が不明な答案。また「現場に任せる」だけで、社長の積極的な関与が見えない答案も減点対象です。留意点が書かれていない、または設問要求を無視した答案は大幅減点です。

今日の二次試験メモ

  • 外部連携は組織変革の契機:提携や協業といった外部環境変化は、組織体制・人材育成・権限委譲の必要性を生む典型的なトリガー。与件に「提携」「協業」があれば、組織課題を疑う。
  • 権限集中の弊害は因果で示す:「社長に権限が集中している」という事実だけでなく、それが「意思決定の遅れ」「部門間調整の困難」「社員の主体性不足」にどうつながるかを因果で書く。
  • 組織体制変更は具体的に:「組織を変える」ではなく、「部門長設置」「権限委譲」「プロジェクト制」など、具体的な施策と理由をセットで書く。
  • 人材育成はOff-JTとOJTの両面:研修(Off-JT)だけでなく、実務を通じた育成(OJT)や権限委譲による成長機会の提供を組み合わせると、答案に厚みが出る。
  • 経営者の役割はビジョン×実行支援×自己変革:ビジョン提示、現場支援、自らの役割転換の3要素を押さえる。留意点では「段階的」「対話」「失敗許容」など、変革の実行可能性を高める視点を加える。

※ 本記事はニュースを題材にした学習用の架空事例です。実在企業の診断・助言ではありません。